敬愛する画人・武石憲太郎さんの作品が展示された空間で、朝一杯の珈琲をいただく。至福の時。昨日は、宮崎を出発し、高千穂の町外れで朴の花を採取。車中に濃密な香りが漂った。成人して間もないころ、先輩画家に連れて行ってもらったバーの、綺麗なお姉さんたちに囲まれて、体を固くしていた時の香りを思い出した。藤の花も採る。この二花は焼酎に漬け込み「花酒」としよう。藤の花酒は、薄紫の清純な酒となる。どのような薬効があるかはいまだにわからない。故郷の町の市役所で、叔母(97歳の老母の妹)の消息を尋ねるが、不明。5年ほど前まで住んでいた市営住宅に今はいないという。行く先もわからないという。別の調べ方を考えよう。気を取り直し、古い珈琲店に立ち寄る。この店の前の道は、20代前半を過ごした団地へ続いている。絵を描き、仕事場としていた...昭和の珈琲店【空想の森から<199>】
「版画」という美の領域[第三期:空想の森アートコレクティブ展/静かな森の夕べ<VOL:18>]
「版画」といえば、消しゴムやサツマイモ、簡単な板などに文様や絵柄を彫り込んで刷った年賀状を思い出す。私は、その原画と反対向きに刷り上がる感触がつかめず、なんとなく苦手としてきた経緯を持つが、貝殻を半乾きの土器に押し付けて連続紋様を造形した縄文土器のデザインを「版」の範疇に加えるならば、その奥行きは無限大に深いものとなる。古代史書の文字の印刷、着物の意匠としての更紗なども驚嘆すべき技術力の高さをみることができる。そして江戸期の浮世絵に至り、庶民にまで普及して、19世紀ヨーロッパのアーティストを驚嘆させる美術史的絵画芸術となったのである。今回、大正期の復刻版の浮世絵版画を展示して、それらのことを考える機会を得た。そして、その版画芸術の系譜は現代版画にまで引き継がれていることを再認識する機会ともなったのである。...「版画」という美の領域[第三期:空想の森アートコレクティブ展/静かな森の夕べ<VOL:18>]
[第三期:空想の森アートコレクティブ展/静かな森の夕べ<VOL:18>]
梅雨入り前の、温い熱気を孕んだ夕闇が古い教会を改装したギャラリーを包み森のホタル「ヒメボタル」が大発生し幻想的な風景を描き出した。旅から帰り、ギャラリーの展示替えをした。掲示の写真は浮世絵版画。歌麿などが混じっているが、明治~大正頃の復刻版なので、市場価値は高くない。だが、その版画の技術は驚嘆すべきものがある。描き・掘り・刷りの分業による仕事だが、江戸期の技術はそのまま引き継がれているとみることが出来る。髪の毛一本一本、雪のひとひら、その雪が傘に降りかかり溶けて滲んでゆく風情までが見事に定着されているのである。インターネットで売り飛ばすのが惜しくて、展示品に加えるとヒメボタルの飛び交う夕べにふさわしい一場となった。こちらは、宮崎県延岡市在住の版画家・黒木良典氏の作品。静かで精密な画面は、装飾古墳の図形を思...[第三期:空想の森アートコレクティブ展/静かな森の夕べ<VOL:18>]
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